パワハラの背景にあるもの――自惚れと侮りを打ち砕くアウグストゥスの叱責

労働問題

こんにちは。

神奈川県鎌倉市で社会保険労務士をしている北村です。

厚生労働省は12月を「「職場のハラスメント撲滅月間」としています。

世にハラスメントと呼ばれるものは無数に存在しますが、今回はパワーハラスメントについて考えていきたいと思います。

パワーハラスメントの定義

まず、パワーハラスメントとは何なのでしょうか?

インターネット上では「本人がパワハラと感じたらパワハラである」という意見が散見されますが、このような定義は正しいのでしょうか?

労働施策総合推進法はパワハラを「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの」と定義しています。

優越的な関係とは「上司や部下」や「経験や知識の豊富な者とそうでない者」、「集団と個人」の関係を指します。

パワーハラスメントと言うと上司から受けるものと考えている人も多いと思いますが、経験や知識、集団の影響力を背景に同僚や部下から受けることもあり得ます。

次に、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものについてですが、これは社会通念に照らし合わせて業務上の必要性がない言動や許容されない言動のことを指します。

例えば、ベテラン社員が新入社員を「こんなこともできないのか」と繰り返し嘲笑する行為は業務上の必要性があるとは言えません。

新入社員に必要なものは丁寧な指導であって嘲笑ではないからです。

労働者の就業環境が害されるものとは、職場環境が不快になり、能力の発揮に悪影響を及ぼす可能性がある言動のことを言います。

私の体験だとなりますが、私が最初に就職した企業の経営者はこちらが挨拶をしても無視し、いつも不機嫌そうにしていました。

あるとき「なにか言いたいことがあるなら言ってみろ!!」と怒鳴られたので「挨拶はしたほうがよいと思います」と言ったところ「朝は機嫌が悪いんだよ!!」と更なる怒声が飛びました。

このような言動は一時的な不機嫌ではなく、職場の雰囲気を悪化させ、就業環境を害するもの典型例と言えるでしょう。

挨拶を無視する、常に不機嫌な態度を示す、そして怒鳴るといった行為は、職場全体の空気を悪化させ、働く人の意欲や集中力を奪ってしまいます。

このように、就業環境が害されるとは単なる不快感ということではなく、不安や怯え等から安心して働くことができず、能力を十分に発揮できなくなる状態を指します。

自惚れと侮りを打ち砕くアウグストゥスの叱責

では、なぜ人はそのような言動をしてしまうのでしょうか。

私はその背景に「自分への自惚れ」と「他者への侮り」があるのではないかと考えています。

古代ローマの哲学者セネカの著作『怒りについて』に興味深いエピソードがあります。

ウェーディウスという人物が開催した宴会で奴隷の少年が水晶の器を割ってしまいます。

これに激怒したウェーディウスは奴隷の少年を「うつぼ」に食べさせて殺そうとします。

この宴会に来場していた初代ローマ皇帝アウグストゥスは少年を放免してやり、水晶の器を全て割らせたうえで、「君はカエサル(※ローマ皇帝のこと)がいる場所で人の処刑を命じることができるとまで自惚れるつもりなのか」と言ってウェーディウスを叱責しました。(出典:セネカ (著)、茂手木 元蔵 (翻訳)『怒りについて 他二篇』岩波文庫)

アウグストゥスはウェーディウスの自惚れと侮りを打ち砕いたのです。

自分に自惚れる気持ちや他者を侮る気持ちは誰の心の中にも、もちろん私の心の中にもあります。

だからこそ、心の中に理性の目をもって自分の行動が適切かどうか判断する必要があるのではないでしょうか

アウグストゥスから「自惚れるつもりなのか」と叱責されないよう慎重に行動したいものです。

鎌倉の海風のように澄んだ職場の空気を作ろう

パワーハラスメントは、加害者と被害者だけの問題ではなく、職場全体の健全性を左右するものです。

鎌倉の海風のように、職場の空気も澄んでいなければなりません。

私自身も日々の仕事や家庭生活の中で自分への自惚れや他者への侮りがないか、理性の目をもって点検しようと思います。

安心して働ける職場は、互いの尊厳を尊重する小さな積み重ねから生まれます。

あなたの職場では、どんな積み重ねができるでしょうか。

もし、私が社会保険労務士としてその積み重ねに関わることができたなら、幸せなことだ思います。

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